PLIE CMS 雑記帳

1MacbethChartのLab値を求めてみよう

MacbethColorCheckerには、CIE(1931)xyY値が掲載されています。
ここから、Lab値を求めてみれば、理論的に正確なチャートを自分で再現できそうです。

計算に必要な式をまとめてみました。
式1〜式3は、色彩工学の教科書には、必ず書かれいる物です。
式1、式2は、なんでこうなっているのかというより、CIEによって、こう定義されている覚えておいて下さい。

式3は、通常の3値刺激値から、単位成分を取り出した値として、非常によく見られるxy色度図の座標変換式を表した物です。
皆さん いいですか〜 いいですよね〜 本当にxy色度図を理解していますか〜 実の所 これの意味合いを正確に知っている人は、一部の色彩学を必要としている人しかいないように思ってます。

Xn Yn Znは、完全拡散反射面での三刺激値と呼ばれるもので、標準光源の三刺激値と同値となり、標準光源によって変わってきます。D50:5000K,D65:6500K をそれぞれ表しています。

Xn

Yn

Zn

D50

96.42

100

82.49

D65

95.04

100

108.89

式4から、XとYがわかりますので、式1と式2から、Lab値が求められます。
ここでは、D65でのXn Yn Znを上記表から選択して計算します。
なお、この値は、私が独自に計算しましたが、計算値に関しては、日本色研のこちらのページで検証しておりますので、間違いないと思います。日本色研さんのCIELABの計算で、視野角2度、光源として 標準の光D65を選択して、XYZに下の値を入れて計算してやれば、Lab値が出てきますよね。

D65でのグレちゃんチャート値

xyY

XYZ

Lab

NO

x

y

Y

X

Y

Z

L

a

b

1

0.400
0.350
10.10
11.54
10.10
7.21
38.0
14.8
12.2

2

0.377
0.345
35.80
39.12
35.80
28.85
66.4
16.9
13.6

3

0.247
0.251
19.30
18.99
19.30
38.60
51.0
3.4
-26.0

4

0.337
0.422
13.30
10.62
13.30
7.60
43.2
-14.4
19.8

5

0.265
0.240
24.30
26.83
24.30
50.12
56.4
16.0
-29.6

6

0.261
0.343
43.10
32.80
43.10
49.76
71.6
-27.0
-3.0

7

0.506
0.407
30.10
37.42
30.10
6.43
61.7
31.4
56.1

8

0.211
0.175
12.00
14.47
12.00
42.10
41.2
20.4
-47.1

9

0.453
0.306
19.80
29.31
19.80
15.59
51.6
46.4
11.9

10

0.285
0.202
6.60
9.31
6.60
16.76
30.9
28.4
-26.4

11

0.380
0.489
44.30
34.43
44.30
11.87
72.4
-24.7
56.9

12

0.473
0.438
43.10
46.54
43.10
8.76
71.6
16.4
64.7

13

0.187
0.129
6.10
8.84
6.10
32.34
29.7
29.7
-54.7

14

0.305
0.487
23.40
14.66
23.40
9.99
55.5
-40.0
33.0

15

0.539
0.313
12.00
20.66
12.00
5.67
41.2
54.0
23.9

16

0.448
0.470
59.10
56.33
59.10
10.31
81.3
0.4
76.7

17

0.364
0.233
19.80
30.93
19.80
34.25
51.6
52.5
-19.4

18

0.196
0.252
19.80
15.40
19.80
43.37
51.6
-18.8
-30.6

19

0.310
0.316
90.00
88.29
90.00
106.52
96.0
5.1
-5.4

20

0.310
0.316
59.10
57.98
59.10
69.95
81.3
4.5
-4.7

21

0.310
0.316
36.20
35.51
36.20
42.84
66.7
3.8
-4.0

22

0.310
0.316
19.80
19.42
19.80
23.43
51.6
3.1
-3.3

23

0.310
0.316
9.00
8.83
9.00
10.65
36.0
2.4
-2.5

24

0.310
0.316
3.10
3.04
3.10
3.67
20.4
1.7
-1.8

i1等の分光測色機では、D65光源の値でなく、D50光源の値が使われておりますので、i1測定した場合には、不適合となってしまいます。後述のLuminusの箇所を参照して下さい。

この表の値を単にグラフに表すと以下のようになります。

これより、グレちゃんの色チャートは、ほとんど、sRGBの範囲内にある事がわかります。
けど、これじゃ〜、色あわせができませんね。
No5とNo16の値が、sRGBの境界線上にあって、ちょっと キツそうな値ですよね。

No16は、そうです。アノ 黄色 です。(どの黄色や〜)街の中のポスター等でも、黄色をよく見ると、色相が、緑ぽく見える場合があります。あれは、色飽和した物を、CMSした結果なんだと思います。もう少し、CMSをカストマイズすれば、黄色く出るかも。

2分光分布からXYZ値を求めてみよう

なんか、わけのわからん式が出てきましたが、CMSを理解する基礎は、この式の理解と私は、断言します。

  1. R関数:反射物体の分光反射率
    各波長(単色光)の光の反射率を表しています。
  2. P関数:照明光の分光分布
    これは、今から測ろうとする反射物を照らす、照明がどのような波長毎の強さをもっているかを表しています。
  3. x,y,z関数:等色関数
  4. k:三刺激値Yが完全拡散反射(R=1)の時に、Y=100となるような正規化値

結局、Pという照明に、Rという反射率をかけると、ある反射物(紙とか)から、見える光の強度を P×Rが表しています。それを、XYZ表色系での、X色 Y色 Z色に分ける為に、X:Y:Z の比率をかける事で、それぞれの色に分解してるんやなぁ〜。
更に、正規化する為に、Kをかけて整えている。

等色関数

P関数: 基準照明光の分光分布

波長

x

y

z

380

0.0014

0.0000

0.0065

390

0.0042

0.0001

0.0201

400

0.0143

0.0004

0.0679

410

0.0435

0.0012

0.2074

420

0.1344

0.0040

0.6456

430

0.2839

0.0116

1.3856

440

0.3483

0.0230

1.7471

450

0.3362

0.0380

1.7721

460

0.2908

0.0600

1.6692

470

0.1954

0.0910

1.2876

480

0.0956

0.1390

0.8130

490

0.0320

0.2080

0.4652

500

0.0049

0.3230

0.2720

510

0.0093

0.5030

0.1582

520

0.0633

0.7100

0.0782

530

0.1655

0.8620

0.0422

540

0.2904

0.9540

0.0203

550

0.4334

0.9950

0.0087

560

0.5945

0.9950

0.0039

570

0.7621

0.9520

0.0021

580

0.9163

0.8700

0.0017

590

1.0263

0.7570

0.0011

600

1.0622

0.6310

0.0008

610

1.0026

0.5030

0.0003

620

0.8544

0.3810

0.0002

630

0.6424

0.2650

0.0000

640

0.4479

0.1750

0.0000

650

0.2835

0.1070

0.0000

660

0.1649

0.0610

0.0000

670

0.0874

0.0320

0.0000

680

0.0468

0.0170

0.0000

690

0.0227

0.0082

0.0000

700

0.0114

0.0041

0.0000

710

0.0058

0.0021

0.0000

720

0.0029

0.0010

0.0000

730

0.0014

0.0005

0.0000

波長

D65

D50

380

49.98

24.49

390

54.65

29.87

400

82.75

49.31

410

91.49

56.51

420

93.43

60.03

430

86.68

57.82

440

104.86

74.82

450

117.01

87.25

460

117.81

90.61

470

114.86

91.37

480

115.92

95.11

490

108.81

91.96

500

109.35

95.72

510

107.80

96.61

520

104.79

97.13

530

107.69

102.10

540

104.41

100.75

550

104.05

102.32

560

100.00

100.00

570

96.33

97.74

580

95.79

98.92

590

88.69

93.50

600

90.01

97.69

610

89.60

99.27

620

87.70

99.04

630

93.29

95.72

640

83.70

98.86

650

80.03

95.67

660

80.21

98.19

670

82.28

103.00

680

78.28

99.13

690

69.72

87.38

700

71.61

91.60

710

74.35

92.89

720

61.60

76.85

730

69.89

86.51

上記表が、有名な等色関数です。
結局、各波長毎の単色光(これ以上は分解できない色光)を、もし、x色 y色 z色の3原色で、表した場合には、どういう比率になるのかを、表の形式でまとめた物です。(厳密には、x色 y色 z色は虚色と呼ばれ、現実には存在しない数学上の色です)
実は、関数といいながら、数式では表現できないんですよね。これは、人間が、各波長毎に、経験的な色の混ぜ合わせの結果を、標準としたものなんです。色は、心理物量という言われが、まさしくここに凝縮されています。

等色関数は、上記表では、10nm毎に掲載していますが、これは、i1proの測色精度が、10nmだから、それを掲載しています。より、高精度には、1nm毎に上記等色関数が定められています。
それでは、これを単にグラフ形式で表してみましょう。

よく、カラーマネージメントの解説の時には、この絵が出てきますよね。
本来は、3色の加法混色で、全ての色が表現できます。それじゃ〜、この3色の元の色は、何なのか?というと、既にそれは、実在する色ではありません。
実在する色では、完全には加法混色で、全ての波長を等色できなかったので、今の表色系の元となる XYZ表色系が考案されたのです。 ハイハイ ソニーの4原色の意味を説明するには、実在する色の表色系であるRGB表色系と、このXYZ表色系の意味合いを理解していると、意味がわかると思いますが...

次に、基準照明光の分光分布をグラフで表してみましょう。

まぁ、こういう光の分布は、イビツという見方もあるけれど、実際に、この光の分布を作ろうとすると、かなりやっかいなようですよ。
通常の蛍光管の分布なんて、ギッタンバッタンしていますので。

これらより、標準の光も規定だきたし、等色関数もわかりました。そして、後は、実際に、紙に印刷されている色パッチの分光分布を測定すれば、それを波長毎に積算すれば、上記積分計算、実際には、10nm毎の数列演算で、XYZ値が求められます。

実際の掲載は 以下の通りです。
等色関数 xyzの値を そそれぞれ Sx Sy  Szとすると。

X1 = R(380)*P(380)*Sx(380)+R(390)*P(390)*Sx(390)+・・・
              +R(720)*P(720)*Sx(720)+R(730)*P(730)*Sx(730)
= R(380)*49.98*0.0014 +・・・ +R(730)*69.89*0.0014

同様に Y1 Z1 それから kも計算してあげます。

x= 100*X1/(P(380)*Sy(380)+P(390)*Sy(390)+・・・+P(730)*Sy(730))
同様に y zを計算することになります。

という事で、精度を細かくするという事は、測定波長の間隔を短くするという事になり、計算量はかなり大きくなります。

3Luminus

照明の事なんですけど、実を言うと、私もあまりわかっていないんですけどぉ。
Labというと、直ぐにデバイスインデペンダントな値だと言う説明がされますが、果たして本当なんでしょうか。
その根拠や、実体験した方は、いらっしゃいますか?

これは、i1でグレちゃん色チャートの幾つかの値を測色し、それを、各光源の元での見え方をシュミレーションした物です。
(i1Shareでのハードコピーです)
色とは不可解です。色によっては、観測光源が変わっても、ほとんど、見え方に差が無いものもありますが、ここでは、特に、人の肌色に関して、4列目の黄色と6列目の肌色(そのもの)に関して、D50(5000K相当)と D65(6500K相当)の見え方が、違いますよね。特に、人肌に関しては、人間の目がシビアになっているので、このような差分が見れてしまっているのかも知れません。(グレエもちょびっと違っていますが、あなたのモニターには違いがわかりますでしょうか)

これは、重要な事です。dEが2くらいでも、同じ色に見えるものと、色の違いが顕著に認識されてしまう色があるという事です。ここら辺りは、色彩工学では、「均等な表色系」として、まだ、発展段階の学問の所のようです。
更に、言えば、コンピュータカラーマッチングと言えど、色の心理的見栄具合を盛り込んだ、マッチング方式には、改善の余地がある事が、わかってきます。
まぁ、ここまで来ると、通常は、自分の出したい色を、カラープロファイルをカストマイズして対応するのが現実的手法になります。

Lab値は、式1等で、ある光源での完全拡散反射面の三値刺激値をパラメータとしている関係で、Lab値といえど、ある色温度を想定しての値の標準化だと思えます。
項番1で示した D65でのグレちゃん色チャートのLab値は、D65光源で測定した時の値ですので、i1での観測光源D50で測色した値とは、異なります。
それでは、理論値としてのD50を観測光源としたLab値は、Xn Yn Znである完全拡散反射での三値刺激値が違うだけなので、計算しなおして見ることにします。

(次回掲載)