ジゼル 2幕から 全景

[演目]
ジゼル2幕から。

[主催者]
バレエ教室 スタジオアン さん。

[写真的考察]
D4 + 70-200mmF2.8VR2
ジゼルと言えば、白鳥の湖第2幕湖のほとりと同じく、青のイメージが強い演目です。
発表会では出演者の踊りを見せる事が、そのバレエ演目のイメージを表現する以上に大切だと思っています。
よって写真もあまりにも青々した雰囲気でなく、そこに見えるダンサーの肌色をある程度考慮しながら、元のジゼルの青のイメージを再現する事になります。
プロ公演であれば、より舞台上のイメージを強めて、肌色の再現は弱くなりますが、それでも肌色と舞台イメージの青とのせめぎ合いの中で、現像作業を行っていく事になります。こういう色の見せ方などは、幾ら現場での色温度を変更しても、到底現場でのJPEG一発撮りではできない作業です。
というのも、色に関する箇所は、色温度、色合い、輝度をセットとして相互に依存している事、及びカメラのモニタではそれらの微妙な変更も含めた場合、現場作業でできる事ではないのです。
厳密性を求めれば完全にカラーマネージメントされたモニターの元での現像作業が必須となってしまいます。

RAWで撮影するから、撮影時の色温度は適当で良い。
という考え方もありますが、特に、青のイメージの写真を撮影する際には気にしておくべき事があります。
通常の舞台撮影時の色温度は、2900k~3200kくらいの いわゆる電球色モードが標準になります。
しかしながら、この色温度で青のバレエを撮ると、そのモニターに映る色は、真っ青となってしまいます。
また、白チュチュ等も階調オーバとなり気味で、露出の確認に失敗する事が多くなります。
この為に、青のイメージを晴天モード(4500k~5500k)くらいで撮影して、撮影時には色よりも、適切な露出及び階調が保たれている事を確認するのが、大切です。

適切な露出で撮影されたデータを、現像段階において、厳密な色出し作業を行うのが、青イメージ写真の定番の撮影手法になります。

ジゼル 子供達の全景

[演目]
ジゼル1幕から。
発表会で農民達の踊り部分を、子供達の群舞として踊られています。
[お教室名]
横浜にある スタジオアン さん。
[写真的考察]
D4 + 70-200mmF2.8VR2
バレエの群舞の終わりでは、写真のように全員でポーズを付けて終了というパターンが一般的です。
舞台写真では、撮影位置が固定されますので、基本的には観客席の後方からの撮影になります。
各種条件を考慮して、撮影位置の最適な場所があります。
基本的には、レンズの焦点距離70mmで、舞台の全体を撮影できる位置がベストポジションになります。
この場合、全景からグループ(2間分の長さ)撮影に関しては70-200mm、更にその上としての小さな子供一人を撮影する為に、200-400mmクラスの焦点距離の2本のレンズで、全てが撮影できます。

更に写真のような全景を撮影する場合には、ピント範囲を確保したい為に、できるだけ絞り込んで撮影する事が望まれます。
実を言うと、全景を撮影するというのは、個人を撮影するよりも、色々と考えるべき要素が沢山あります。

ピント範囲を拡大する為に、シャッター速度を落とす事もありますが、手ブレ・被写体プレを考えるとそれほど低速シャッターは使えません。
そうすると、ISO高感度にして撮影する事になりますが、個人の顔の表情までしっかり撮影する為には、ノイズを考慮しなければなりません。
ノイズを考えると、カメラとしては良いカメラが必要で、ノイズ処理のうまい現像ソフトでの現像が必要となってきます。

通常舞台演目中の照明としては、舞台後方の照明が明るくない場合が多いので、単に撮影しただけでは、後方に配置された被写体が暗くなり、適切な全景写真には難しい形となります。
この写真においても、後方の子供達に照明が来ていなかった為に、現像時にかなり暗い部分を明るく処理しています。
舞台写真においては、ダイナミックレンズのコントロールがかなり必要になってきます。

全景写真に関して特に、JPEGのような現場での撮りきり写真という事は、発表会では考えられません。
もちろん、プロの演じるバレエ公演では、ダンサーの一人の一人の表情というよりは、全体としてのイメージを伝える方が重要となりますので、
その場合には、JPEG撮りきりの写真でも良い場合があります。

プロの公演と、発表会写真では求められる物が違い、それに対応してカメラマン側の作業も異なると考えるのが普通だと思います。

サタネラ


[演目]
サタネラ。
物語としては婚約者がいる男性をサタネラという魔性の女(!)が男を奪い取ってしまうという物です。
物語の内容も内容なので、小学生などの演目には採用されない場合が多いです。
この踊りは、あくまでも女性は男性を誘惑するように、時には色気たっぷり、時には小悪魔的に誘いを装ったりという感じが出れば、良いと思っています。

発表会などでは、もっと沢山踊られる事を望みたいものです。
この踊りは、私の好きな演目の一つです。

[ダンサー]
KIDS DANCE M所属 佐藤愛美さん。
既にシニア部門ではありますが、各種コンクールで上位3位以内にも入るテクニシャンです。
彼女の踊りは非常にこなれており、自分の踊る意識と観客が見ている内容が、一致している事を自覚しているような踊りです。

[写真的考察]
D3S + 200-400mmF4
掲載写真は、バレエポーズのパの名前もないようなものです。
しかし大きなパでなく、こういうなんちゃないパの所を抜き出して撮るのがどちらかと言えば、バレエカメラマンの醍醐味であったりします。
サタネラバリエーションの冒頭部分ですが、これから始まる踊りの楽しさが伝わってくるような内容です。
観客席からは表情まで明確に見えなくても、写真であれば、後で表情まで確認できます。
こういうのも写真ならではの表現力だと思っています。
なお写真の現像においては、魔性の女(^_^)を感じさせる為に、パープルを意識的に生かすような現像をしています。

[関連写真]
実際の写真をもっとみたい方に画像を掲載致します。

最後の写真は、カメラマンの私がダンサーに注文してしまった箇所です。(すみません)
シェネで進行して途中にこういう独特なパがあるのですが、コンクールでもこのパに対してどうあるべきかがわからないような物が多いのです。
カメラマンの視点からすれば、そういう一瞬でさえお客様に見せるパ=写真のタイミングなので、そういう事を見せて欲しいという旨をゲネプロの時に彼女に言った結果の写真です。
そういう事も本番で取り込めるフレキシビリィある技術力の高さと考え方の柔軟さが、彼女の一つの良い面だと思ってしまいました。

[トピックス]
KIDS DANCE Mというバレエ教室には、かなり昔から撮影させて頂いています。
一番初めに撮影した時に、写真のダンサーが中学1年生でそれ以外生徒さんは全て小学生以下でした。
中学生1年生にしてその当時70人くらいだったでしょうか、生徒のトップに彼女がいました。
その当時から、頂点として恥ずかしくない踊りを求められているのは、どういう気持ちだったのでしょうか。

その当時お教室の先生によれば、発表会の時などは、小学生高学年はそれ以下の小さい子供達を引率等、お姉さんとしての役割が求められている事には、とても感心しました。
到底学校では教えられないこういう躾けなど、バレエ教室がバレエテクニック以外の重要な役割を持っているのも、社会貢献としての役割なのではないかと思います。