クラシックバレエの写真撮影

BALEET[バレエ] PHOTOGRAPH[写真] JOB[仕事]

私の仕事の2大テーマです。
クラシックバレエと写真撮影。
(以下写真は バレエ教室:KidsDanceM 発表会写真より引用)

バレエを撮影する事は他のスポーツ撮影とは決定的な違いがあります。
恐らく今から言う事は、あまり明言はされていないと思いますが、この職業に就いている人は、明確に意識せずとも、多くの人が共感するだろうと思う事項です。

バレエの写真撮影は難しいのか

難しさの定義にもよりますが、特殊性はありますが、簡単な部類だろう思えます。
ある種の適正が必要ですが、バレエの動きは基本的には体系としてまとめられているので、それらを把握して撮れば良いです。
クラシックバレエは、踊りの基本的要素は、数が絞られていますので、繰り返しの撮影の練習によって、比較的写真撮影技量は付けやすい領域だと思います。

経験できるのであれば、バレエコンクールを5回くらい撮影してみれば、基本訓練は終了し、撮影の仕事に就けると思います。
一回のコンクールで例えば、200人撮影するとした場合、5回で1000人分の踊りの撮影をする事になります。
バレエコンクールでは、典型的な踊りをある程度技量の高い人が繰り返し踊りので、訓練の場には最適だと思えます。
(但しコンクール撮影で練習する事はなかなかにできませんが)

私がバレエの舞台撮影が難しくないと言い切るのは、撮影者から考えた場合、基本的には撮影する内容が決まっているので、それを的確に事務的に撮影すれば良いと言う事です。

しかし、このありきたりの事が、バレエの写真を他の撮影領域とは大きく隔たりを発生させているのではないかと思います。

バレエの写真は誰が見ても良し悪しがわかる

バレエ写真の一番の特徴は、その写真の善し悪しがバレエを踊った事のある人ならば、7歳の子供でも、熟練のバレエ教師でも同じように判別できてしまう事です。
(多少の誤差はあります)

バレエは他人に見せる一つ一つのパが予め決められた形になっているので、良い悪いの判断は、全ての人にとって明らかなのです。

ここの所が他の写真撮影領域と大きく異なる所だと思います。

例えば、サッカーでゴールの一瞬を切り撮る場合や、ラクビーで人と人がぶつかり合い空中に人がフラングしてボールを捕らえる瞬間の写真があっとします。
その写真が良いのかどうかは人の感性で判断する所ではありますが、ベストな写真かどうかは、撮影者しかわからない。

撮影者しかわからないような写真に正解/不正解はないと思います。
逆に言えば、その一瞬のタイミングを撮ったものが、その1枚しかない場合、その写真を見る人には、選択権がありません。

連写で切り取って後でよさそうな物をセレクトするという感じでしょうか。
それでもセレクト時の正確な尺度という物はありません。

ところが、バレエの写真に関しては、ベストな写真は、撮影者にもそれを見る子供にも大人にも全ての人にとって明らかな事です。
ミスった写真は誰にでも明らかです。

写真の善し悪しが子供からおじいさんおばあさんまで、全ての人にとってあきらかな事が、他の写真撮影領域の物と異なる一番の特徴と言えます。

カメラ性能は基本性能が高い事が必要

今やカメラの連写性能が、フルサイズ領域では30fpsにもなろうとしています。
30fps  = 33ms /枚

はっきり言って、この程度の連写性能であれば、ある程度の撮影はできますが、動きの頂点は撮れません。
減殺の連射というのは、撮れない事のミスを軽減する事を最優先としており、写真としての頂点を撮れるのかどうかは、カメラまかせ だと言う事です。
少なくともプロとしての定義:再生産性という観点から言えば連射は完全ではありません。

再生産性とは、同じ条件であれば、同じ結果を残す事。
これがプロとしての基本だと私は思います。
同じ条件がありながら、カメラの性能頼りで、どこかの33ms/枚のフレームに 男性のアッサンブレ・アントルシャ・シスが5番に重なったシーンを止めて撮る事。
連射ではそれは運まかせになってしまいます。もちろん、数時間延々に踊られるシーンを連射などで撮影するのは、ファイル容量も最終的な写真セレクト時にも実際的ではありません。

カメラの連射性能として、将来的に、200fps= 5ms/枚 程度なれば、恐らく連射性能に対してバレエ写真としての再生産性の規定は満たされると思います。
2021年現在カメラメーカが 20~30fpsで、動態撮影の売りとしていますが、私からすれば、子供だましと思えてしまいます。
そんな程度の連写性能で撮れる絵というのは、再生産性のない領域の写真だと思います。
(もちろんプロの世界には、 撮れてなんぼのもの という世界もありますけど)

クラシックバレエの撮影で必要なカメラとは、以下の三点です。
1.自分の意志に反応するシャッター
2.ファインダーの遅延なさ
3.ファインダーのブラックアウトの減少(あるいはブラックアウトフリー性能)

を満たしているカメラです。
これが現実のミラーレスのカメラでは、改善はされつつありますが、まだ十分ではありません。
基本性能が高いカメラが最適なバレエ撮影用のカメラとなります。
更に舞台撮影では、カメラのシャッター音の低減が必要です。

舞台撮影は経験でなんとかなる

実際問題、バレエの写真を撮っている人が、本当にバレエのパを知っているかと言えば、少ないのが現実でしょう。
でも舞台写真は経験を積む事で、どこを撮れば良いのかわかりますので、この領域の仕事をやっている人達は沢山います。

特にプロのバレエ公演などとなれば、照明も美しいし、演技している人達もアマチュアよりバランスのキープの一点を一瞬で作り出し、そのキープ時間も長いので、写真撮影のタイミングは、アマチュアの被写体に対して長くなり、とても撮りやすくなります。
撮影としては、平易な技量で撮れる事になります。

それに対し、パッセもままならないちびっ子バレエを撮る場合、これはとても大変な事になります。ポーズも決まらないし、場合によっては10人程度が同じ演技を舞台上で行います。
そうなると、微妙なタイミングというより、いかに沢山の人達を平等に撮って行くかの方が難しくなってきます。

バレエ写真で大変なのは、技量のあるうまい人を撮る事でなく、アマチュアの人達が複数人出ている内容を撮りきる事がより難しくなります。

しかし、舞台上で繰り広げられる演技内容であれば、撮影者の経験と共に、テキパキ撮れるようになります。

しかし単なる撮影経験だけでは難しい領域があります。

もう一つのバレエ写真

私もその起源は知らないのですが、発表会では舞台撮影以外に、ホールホワイエ等で俗に言われる ライティングを入れたポーズ写真 という物があります。
背景を作り、数本のストロボを使い、そこで個人のポーズを撮るというものです。
昔ならこう言う形態もアリと思うのですが、現代では本当に必要なのか少々疑問に思う事もあります。

フィルム時代では、暗い舞台をカラーで綺麗に撮影する事は難しい時代でした。
その時には、舞台とは別撮りで照明環境を整えて、クリアに個人のポーズを記念の意味で撮るというのも、価値のある事だったと思います。

但し、現代はカメラの性能が飛躍的に向上した事で、舞台上での写真の方が良い場合もあります。
もちろん、舞台の振り付けによっては、群舞で後ろの方でしか演技しておらず、その結果として個人としての写真の数が少ない場合も考えられ、そう言う人達の記念写真を撮るという意味合いもあるかと思います。
但し、そのような群舞の後ろだけで踊るという振り付けは、発表会バレエでは それはあまりよい振り付けとは思えませんが、各教師の思惑があるのかも知れません。

ポーズ写真では、カメラマンは単に、被写体の人が作るポーズを撮影すれば良い。
と言う事でなく、場合によっては、振り付けを良い方向に直したり、ポーズを提案したりする必要が出て来ます。
この領域は、舞台撮影とは異なる技量が必要になつてきます。

このポーズ写真の撮影領域は、バレエポーズとして適切にお直しができる技量が求められてきます。

バレエポーズとして適切にお直しができる技量というのは、具体的に言えば、バレエ教師としての技量・素養です。
バレエ教師としての技量をカメラマンに求めるのは、とても大変な事です。
一歩引いて、バレエ経験の長い人の技量が必要になってきます。

こうなると、そういう技量を持ったカメラマンを探すのは、とても困難です。
通常はそれでも、舞台撮影を通じて得たバレエ撮影経験で撮影している人達がほとんどではないでしょうか。

バレエの動きはわかっても、そのポーズを撮るための事例を自らが、指示あるいは示すには、バレエ経験者でないとかなり難しいと言えます。

例えば、「背中でアームスを支えて」という指示をカメラマンから聞く事はほとんどないでしょう。また、ポアントを履いた人に、その人の技量に応じて場合には、フルポアントで立たせるかどうかの判断も、難しくなります。

舞台バレエの撮影技量は、ポーズ写真の撮影技量とは異なる領域です。

ポーズ写真撮影の領域に限って言えば、バレエの踊りの経験のある女性は、どの撮影会社でもひっぱりだこです。
極端な話し、撮影できなくても、「お直しができる」「バレエポーズを提案できる」というバレエ技量を持っている事でも良いかも知れません。
最近のカメラは、優秀ですから、ファインダーをのぞいてシャッターをきれば撮影できてしまいますので(^^;)

まとめ

バレエの撮影カメラマンには、
・舞台撮影としての経験
・適切な機材を使う経験
・バレエの踊りに精通している事

が必要です。
撮影機材もかなり特殊ですし、その必要とする撮影者の技量範囲も結構広くなります。

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バレエ歴は30年以上(現在も一流教師の元でレッスン継続中)
バレエの写真撮影も同じく30年以上